歩く瞑想のやり方
歩く瞑想は、歩きながら足や呼吸に注意を向け続ける練習です。特別な場所も、わざとゆっくり歩くことも必須ではありません。やり方は伝統によって少しずつ違うので、ここでは三つを並べ、いつもの道で始める方法をまとめます。
歩く瞑想とは
歩く瞑想(歩行瞑想)は、歩くという動きそのものに気づき続ける練習です。注意を置く先は、足の裏の感覚、足の動き、呼吸のどれかです。考えごとに気づいたら、責めずに足へ戻ります。戻ることそのものが、この練習の中身です。
日本テーラワーダ仏教協会のスマナサーラ長老は、瞑想は運動ではないと書いています。速く長く歩いても、それだけでは瞑想になりません。反対に、いつもの速さでも、注意が足にあれば歩く瞑想です。
禅の経行と一息半歩
曹洞宗の坐禅では、坐る時間のあいだに経行(きんひん)という静かな歩行をはさみます。手は叉手という組み方のまま、一呼吸のあいだに足の長さの半分だけ進み、次の呼吸で反対の足を半歩進めます。これを一息半歩と呼び、始まりと終わりは鐘で知らせます。
円覚寺の横田南嶺管長が紹介する歩き方では、足の裏の一点に意識を置きます。息を吸いながら足を持ち上げ、吐きながら下ろします。慣れてきたら、足の裏が床から離れる感覚、体重が移る感覚、着地する感覚を細かく追います。
動きを言葉にする実況
スマナサーラ長老が教えるのは、足の動きを心の中で言葉にする方法です。ゆっくり歩くときは「右足」と足全体を感じ、「上げます」「運びます」「下ろします」と一つずつ確かめ、体重が移るのを感じてから左足に移ります。胴体は揺らさず、足で歩きます。
いつもの速さで歩くときは、「左足、右足」と足に合わせて言葉をかけるだけで構いません。長老は、特にゆっくり歩く必要はないとも書いています。
呼吸に歩みを合わせる
ティク・ナット・ハン師が開いたプラムヴィレッジでは、吸う息に2、3歩、吐く息に3、4歩を合わせます。屋外では、吸う息と吐く息にそれぞれ3歩ずつが歩きやすいと案内しています。目的地はなく、歩くために歩きます。
いつもの道で始めるには
寺でなくても、いつもの道で始められます。スマホはポケットに入れ、画面を見ないと決めます。最初の数分は速さを変えずに、足の裏が地面に触れる感覚だけを追います。
信号で止まったら、そこで3回呼吸をして、周りの音と空を確かめてから歩き出します。プラムヴィレッジで鐘が鳴ると手を止めるのと同じ使い方です。
考えごとが浮かんでも失敗ではありません。浮かんだと気づいた瞬間に、また足へ戻ります。
研究でわかっていること
歩く瞑想の研究は、まだ小さなものが中心です。ストレスの強い74人を無作為に分けた試験では、4週間で8回の歩く瞑想のプログラムに参加した人のほうが、ストレスの自己評価が大きく下がりました。ただし比べた相手は、何もせずに待ったグループです。
別の試験では、104人が1週間、毎日35分の意識的な散歩をしました。自然の中を歩いた人も街を歩いた人も、気分と、いまに注意を向ける傾向の自己評価が改善し、自然のほうが上回ることはありませんでした。森へ行かなくても、いつもの道で試せるということです。
Angel Stepが出す歩数はiPhoneがポケットの中で数えたものなので、歩いているあいだ画面を見る必要はありません。数字は歩き終わってから一度見れば足ります。
出典
- 曹洞宗「坐禅の作法」。経行は叉手のまま、一呼吸のあいだに足の長さの半分だけ進む一息半歩 sotozen-net.or.jp
- 円覚寺 横田南嶺管長の法話。足の裏の一点に意識を置き、息を吸いながら足を上げ、吐きながら下ろす engakuji.or.jp
- 日本テーラワーダ仏教協会「歩く瞑想の姿勢」。右足、上げます、運びます、下ろしますの実況と、瞑想は運動ではないという説明 j-theravada.com
- 日本テーラワーダ仏教協会の質疑応答。歩く瞑想は特にゆっくり歩く必要はなく、左足、右足と言葉をかけてよい j-theravada.com
- プラムヴィレッジ「Walking Meditation」(英語)。吸う息に2、3歩、吐く息に3、4歩 web.plumvillage.app
- 英国プラムヴィレッジの実践の手引き(英語)。屋外では吸う息と吐く息に3歩ずつ、歩く瞑想に目的地はない plumvillage.uk
- Teutら、2013年(英語)。ストレスの強い74人の無作為化比較試験、4週間で8回、比較相手は待機グループ PubMed
- 104人が1週間、毎日35分歩いた無作為化試験(英語)。自然と街で改善に差はなかった PubMed
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